受精卵となるには、卵子が成熟する必要があります。卵子が成熟しないことにより「うまく排卵できない」「うまく受精できない」などの障害が起こります。
そのため卵巣の中に卵子が留まり「多嚢胞」という状態になってしまうのです。これがPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の正体です。
「PCOSを治療する」ではなく、「排卵障害と成熟障害を治療する」と理解する
排卵障害への治療
一般不妊治療(タイミング、人工授精)で排卵は必ず必要です。
その排卵が障害されることが困るんです。排卵を治療してくれる薬には飲み薬、注射があります。
- 飲み薬
- クロミフェン
- セキソビット
- レトロゾール/フェマーラ など
- 注射
- HMG
- FSH
- HCG/LH など
それぞれの薬に特徴があります。外来で自分の体に合った薬を選んでもらうこと
成熟障害への治療
PCOSの成熟障害への治療には忍耐が必要になります。
刺激が弱いと→育たない 刺激が強いと→育ちすぎる
ちょうど良い刺激で卵子が育ち成熟するのを待たないといけないからです。
今、ご自身の治療は下記の図のようなサイクルになってはいませんか?
成熟卵を育て排卵させることができるのであれば、生理何日目に排卵させても妊娠は可能です。
PCOSで大切なのは、成熟卵を必ず排卵させることです。生理何日目かにとらわれすぎないようにしましょう!
排卵障害への治療
HMG注射でゆっくりと卵胞を育てていきます。
体外受精においてはPCOSでの排卵障害が逆に良かったりもします。
当院ではPCOSの状況をしっかりと把握し、PCOSの方に余分な強い排卵抑制(ショート法やロング法)は必要としません。
卵巣刺激中にしっかりとホルモン採血をして卵巣を調節すれば、PCOSの方が排卵して採卵キャンセルになることや治療がリセットになることは当院ではほとんどありません。
成熟障害への治療
HMG注射でゆっくりと卵胞を育てていきます。
PCOSではたくさんある卵子をどれだけ成熟卵として採卵できるかが勝負となります。
PCOSはもともと成熟障害を持つ方が多いことがわかっているので、体外受精では特に卵子の成熟にはこだわるべきです
卵子全体が未熟の段階で採卵決定をすると、未熟卵子と未熟すぎて卵胞壁からはがれ落ちていない空胞卵胞ばかり穿刺することになり、結局、未熟卵数個と空胞卵胞ばかりでした…(泣)という結果になってしまいます。
PCOSはまず採卵にこだわるべきだと私は考えます。