・PRP卵巣注入療法とは患者様自身の血液から抽出した高濃度の血小板
(platelet-rich plasma:PRP)を卵巣内に注入する方法です。
・血小板は、出血を止める作用の他に、細胞の成長を促す物質や免疫にかかわる物質を含みます。
・これまでにPRP療法は皮膚の若返り、脱毛、関節炎などで用いられていますが、確立された治療法はまだ存在せず、現在も有効性を判断するために研究が行われています。
・詳細な卵巣内でのメカニズムは未だ不明ですが、PRP卵巣注入療法による卵巣機能の改善が期待されています。
卵巣注入療法は、
以下の患者様を対象とした治療となります。
入院などは必要なく、
採血からご帰宅までおよそ1時間半程度で
その日にご帰宅いただけます。
対象の患者様
不妊治療中で体外受精(採卵)を予定する患者様
卵巣機能低下で悩まれている患者様
01
採血
前腕から静脈血を
20ml採取します。
※当院では原則
月経中に治療します
約30分
02
抽出
遠心分離機で血漿部分を抽出しPRPを採取します。
約30分
03
注射
調製したPRP(約1ml)を半分にわけ、患者様の両側の卵巣に0.5mlずつ注入します。
約30分
04
ご帰宅
30分程度安静にしていただき、その日にお帰りいただけます。
ご留意事項
・治療は採卵と同様の手技となります。
・当院では原則、月経中に実施する治療となります。月経がない方は月経を内服薬で起こしてから実施致します。
・採取したPRPが固まるなど分離後の症状が子宮内注入に不適切と判断した場合、「再度採血」または「投与中止」となることがあります。
自費診療となります。詳細はお問合せ下さい。
論文を発表している研究者
クリックで論文のあらすじをご覧いただけます。
早発卵巣機能不全4人の患者に、卵巣刺激を行いながら卵巣内自己PRP注入を実施。
FSHとAMHレベルの改善を認める。
4人全ての患者で4〜7個の卵子が採卵できた。
1名は妊娠継続となっている。
40人の患者(35-42歳)で報告。
新鮮胚移植でのPRP卵巣注入ありかなしかで検討。
PRP群の着床率は33.33±44.99%、臨床的妊娠率は33.33±44.99%
出生率は40.00±50.71%、対照群の着床率は10.71+28.95%(p=0.70)、
臨床的妊娠率は10.71+28.95%(p=0.69)、出生率は14.29+36.31%(p=0.71)
PRP注入での有意差なし
3人の女性を対象
40歳 で早発卵巣不全:FSH高値・AMH低値・月経時に卵胞確認できず
PRP卵巣注入すると
FSH:119→27 / AMH:0.16→0.22
27歳で早発卵巣不全:FSH高値・AMH低値・AFCなし
FSH:65→10 /AMH:0.06→0.13
46歳で閉経:FSH高値・AMH低値・AFCなし
FSH:46.5→20/AMH:0.17→0.25
その後、三人とも妊娠を確認している。
早発卵巣不全(6ヶ月以上月経が来ない37歳女性)
AMHは0.02ng/ml
FSHは63.65mIU/ml
LHは44.91mIU/ml
PRP卵巣注入をすると
→卵巣刺激で2回採卵ができ
→3個ずつ採卵ができた
→初期胚を移植し、妊娠出産となる。
早発卵巣不全女性 311人を治療
早発卵巣不全 ESHREの定義
・少なくとも4カ月間の稀発月経であり
・FSH値 >25 IU/ml
・4週間の間隔をおいて少なくとも2回測定
・40歳以前に診断
186人が月経時に卵胞が見えない(AFC0)状況出会った
PRP卵巣注入をすると
→186人中99人に卵胞が見えるようになった
→87人だけがAFC0のまま
もともと卵胞が見えている女性では
PRP卵巣注入をすると
→AFCが有意に増加した(1.7±1.4 vs 0.5±0.5; p<0.01)
→AMHが有意に増加(0.18±0.18ng/ml対0.13±0.16、p<0.01)
→FSHは統計的に有意な差はなし(41.6±24.7対41.9±24.7、p=0.87)
311名の参加者のうち、130名が採卵を実施
PRP卵巣注入をすると
→82名(全体の26.4%)は初期胚ができ25名は胚を凍結保存
→57名は新鮮胚移植を行い13名が妊娠しました(胚移植あたり22.8%)
合計すると、PRP治療を受けた311名の女性のうち、25名(8.0%)が自然妊娠または体外受精後に着床し、25名(8.0%)が胚を凍結保存しました。
年齢中央値 41歳 AMHが0.8ng/ml未満
月経周期3日目の FSHが12mIU/ml以上
83人を対象に前向き検討。
46人:PRP卵巣注入を受け(PRP注入群)
37人:注入なし(対象群)
3ヵ月後調査
PRP注入群は
→FSH、AMH、AFCが有意に改善
→ 生化学的妊娠率26.1%(26.1%対5.4%、P=0.02)
→臨床的妊娠率23.9%(23.9%対5.4%、P=0.03)
対照群は
→FSH、AMH、AFCに変化なし
→ 生化学的妊娠率5.4%
→臨床的妊娠率5.4%
全体的にPRP卵巣注入群で有意に高い結果になる
しかし、流産率と生児出産率では差はなし
182人の女性 平均±SD年齢は45.4±6.1歳
卵巣PRP注入療法を受けた
事前にAMH、BMI、血小板(PLT)濃度を記録
2週間間隔で最大3カ月間
血清AMH、卵胞刺激ホルモン、エストラジオール採血
51名(28%)の患者で血清AMHの改善
AMHの最大増加までの平均間隔は4週間(範囲2~10週間)
年齢別(42歳未満と42歳以上)に分類
治療後に両グループで有意なAMHの改善あり
→それぞれp=0.03、0.009
ただし、FSHは両グループとも卵巣PRP注入療法後に上昇
高齢で閉経が近い女性への改善は厳しいという見解。
その他
Pontos et al.2019/Callejo et al.2020/Farimani et al.2019/Ahmadian et al.2020/Bakacaket et al.2015/Cremonesi et al.2020/Hosseini et al.2017
卵巣に影響があるとされている血小板から放出される因子
BMPs
CCLS
EGF上皮細胞の増殖・分化を
刺激し血管新生を促進
IL-8
PDGF細胞増殖・軟部組織の
修復促進
PF4/CXCL4
P-selectin(CD62)
SDF-Iα/CXCL12
Serotonin
TGF-βI細胞増殖・
コラーゲンの分泌促進
TSP-I
VEGF血管新生を促進
TIMP-4
GM-CSF
FGF血管新生や
細胞の移動を促進
SIP
IGF
CTGF 細胞増殖・分化を刺激し
骨形成・細胞再生促進
KGF上皮細胞を刺激し
傷口の癒合促進
まだまだ症例検討レベルの論文は多いものの、同じような境遇で悩まれている方にとっては親近感のある内容ではないでしょうか。
「私も同じ環境だ」
「毎月同じ繰り返し」
「採卵するためにサプリばかり増えてくる」
「採卵するために漢方ばかり増えてくる」
「日常生活で努力できることも限られている」
と悩まれる方にとっての新たな選択肢として、PRP卵巣注入を関西では最も早い段階で厚生労働省「再生医療等委員会」から正式な認可を受けました。
医療法人木下レディースクリニック(木下レディースクリニック)ではここに示したような年齢・時間・卵巣機能に苦しまれている患者さまに対して、PRP卵巣注入の治療を開始していきます。
1ヶ月でも早くやりたいという患者様もいらっしゃると思います。
PRP卵巣注入だけなら月経期間中の
1日だけで治療は終了します。
しかし、その後の卵巣機能を判定するための、
診察・採血、また卵巣刺激は
大変重要と考えております。
推奨
第1選択:PRP実施してから3-6ヶ月は当院での採卵
年齢、AMH、E2、FSH、LH、その方の卵巣機能に合わせた当院基準の卵巣刺激を開始致します。
PRP卵巣注入において、その後の効果判定、卵巣刺激の検討は現在のところ必須と考えます。
第2選択:超遠方の方、どうしても当院に複数回受診できない方はPRP卵巣注入だけでも対応可能
PRPについての説明、同意書、採血などが必要となりますので一度初診で【PRP卵巣注入希望】でご予約ください。
治療についてご理解、同意書の確認ができれば当院受診は2回で終わりです。尚、この場合は現在の治療主治医からの許可が必ず必要です。
また、PRP卵巣注入後の採血結果、治療内容についての経過報告アンケートにご協力お願いいたします。
PRP療法に関する
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当医院は、厚生労働省より
施設認定された、PRP療法の
認定医療機関です。